== ラドン療法の安全性==
首都圏の大型ラドン温泉施設において実際に測定したデータである。
採取所 空気摂取(p3) A施設(Rn222)μCi/p3 B施設(Rn222)μCi/p3 東西境界 2.0×10(7) 1.5×10(-11) ロッカールーム 1.6×10(7) 2.4×10(-11) 1.4×10(-9) 事務室 2.1×10(7) 1.4×10(-11) 8.1×10(-10) 休憩室 1.7×10(7) 2.6×10(-11) 1.1×10(-10) 屋 上 2.1×10(7) 1.2×10(-11) ラドン浴室入口 7.1×10(6) 5.4×10(-11) 5.8×10(-9) ラドン浴槽水中 5.4×10(-7) 2.7×10(-6) ラドン浴室空気中 1.0×10(-8) 2.1×10(-8) 自然空気中 (参考データ) 1.4×10(-10) 地下水(飲料用) (参考データ) 1.0×10(-7) 浴槽水中 増富温泉実測値8.1×10(-6) 浴室空気中 増富温泉実測値1.8×10(-8)浴槽水 測定器:株式会社科学研究所 ローリッツェン検電器
空気中 測定器:液体シンチレーションカウンター
===人体への彫響について===
ラドン温泉の場合
Rn222 による被ばく線量の計算の結果、ラドン温泉への入浴者は毎日入浴して40mrem/year(400 μSv/年 0.4 mSv/年)、センターの特定従築員は36.2mrem/yearという値。
これらの値は人間が受ける[大島良雄著 温泉医学[2]p126] 自然放射線被ばくの総計が、世界平均では年間90mrem/year(現在2.4mSv/年)であるということと比較しても十分に安全である事を示します。[日本温泉気候物理医学会著 39巻1.2号 天然放射能と環境人工放射能の所在と由来]
一般人の年間放射線被ばく許容線量は500mrem/year(現在50mSv/年)
天然ラドン泉の場合
ラドン実測値が同程度と仮定して、
Rn222 による被ばく線量の計算は単純計算にて10倍 400mrem/year
ラドン濃度比から単純に割り出すと、約150倍 36000mrem/year
====Rn222 による放射線被ばくについて====
=====Rn222概要=====
Rn222は[森永寛著 医事新報[昭和48.5.5-no.2558]128" ラドン温泉浴の効用"]α(アルファ)粒子を放出する放射性同位元素であり、化学的には化合物を作らない不活性希ガス類に属し、物理的半減期3.83日、生物学的半減期10〜30分で吸収されたRn222の大部分は約2時間のうちに呼気中に失われ、体内に残留するのは体内に吸収されたRn222の2〜3%以下にすぎない。
====ラドン浴入浴者の被ばく線量の計算====
=====経肺吸入による内部被ばく線量=====
ICRP(国際放射線防護委員会)では、Rn222の最大許容空気中濃度、つまりRn222とその娘元素による内部被ばく線量が100mrem/weekをもたらす濃度を168 hr /week (10080min/week)の作業においては1×10(−8)μC/p3と報告しています。計算上、吸入条件として次の様に仮定します。
(イ)Rn222吸入空気中濃度=1.0×10(-8)μCi/p3(実測値)
(ロ)吸入時間=60 min /day × 365 day/year (仮定)
内部被ばく線量=
吸入空気中Rn222濃度(μCi/p3)1 0 0 ( mrem)
−−−−−−−−−−−− × −−−−−− ×10×365= 36.2mrem/year
Rn222最大許容空気中濃度 10080(min)
(μCi/p3)
===== 経皮吸収による内部被ばく線量=====
Rn222溶存温浴の入浴による被ばく線量は、Rn222の研究者であるアンドレーエフ博士により次の様に示されている。
Dm(mrem) =4.35×10(-4)c.t.z
c:湯のRn222濃度(nCi/L)t:湯の持続性(min)z:処方回数
計算上、吸収条件として次の様に仮定します。
c=5.4×10(-7)μCi/p3=0.54μCi/L(実測値)
t=10min/回(仮定)
z= 3 6 5回/year(仮定)
内部被ばく線量=4.35×10(-4)×0.54×10×365=0.86mrem/year
=====経口摂取による内部被ばく線量=====
通常Rn222溶存水を服用することは無いが、仮に服用した場合その効果は食前と食後により異なり、食後服用の方が大きく、その値は[D.Tauchert著 ソ連に於けるラドン療法の実情]アンドレーエフ博士により次の様に示されている。
Dm(mrem) =2.49・a・z/m:食後服用の場合
a;服用水中のRn222濃度(nCi/L)
z;処方量(L)
m;体重(gr)
計算上、摂取条件として次の様に仮定します
a=5.4×10(-7)μCi/p3=0.54μCi/L(実測値)
t=1L/day×365day/year=365L/year(仮定)
z= 60000gr(仮定)
内部被ばく線量=(249×0.54×365)/60000=0.82mrem/year
=====入浴時以外による被ばく線量の計算=====
入浴時以外、ラドンセンター内に居ることにより被ばくを受ける。環境放射能測定の結果、ラドンセンターのロッカールーム、事務室、休憩室のRn222濃度の平均値は2.13×10(-11)μCi/p3。[日本化学会編 放射性物質 環境汚染物質シリーズ 9-264p]自然大気中のRn222濃度は気象条件によって変化し10(-10)μCi/p3〜10(-13)μCi/p3のオーダー。従って上記の測定結果値は自然大気中に存在するRn222の変動内に入っているので、自然大気と同じであることができる。よって被ばくは無視できるが得られた測定値を用いて計算する。入浴者のラドンセンター内に居る時間を2hr/day×365day/yearとして、前記経肺吸入による内部被ばく線量の計算と同様な方法で被ばく線量を求めますと次の様になる。
内部被ばく線量= 0.9 3 mrem/year
=====ラドン入浴者の全被ばく線量と考察=====
ラドン温泉入浴による外部被ばく線量は経皮吸収による量より少ないと考えますが、仮に同程度であるとして合計すると、毎日入浴した人は約4 0 mrem/yearとなる。この値は日本の関東と関西の自然放射線量の差[日本化学会編 放射性物質 環境汚染物質シリーズ 9-264p]関東地方約60mR/year、関西地方約1 0 0 mR/year )程度であります。従ってラドン温泉入浴によるRn222とその娘元素での被ばくによる身体的及び遺伝的障害の発生する確率は ゼロ又は無視できると考えられる。
====従業員の放射線被ばく線量の計算====
=====一般従業員の被ばく線量=====
環境放射能測定の結果、ラドンセンターのロッカールーム、事務室、休憩室のRn222濃度の平均値は2.13×10(-11)μCi/p3。[日本化学会編 放射性物質 環境汚染物質シリーズ 9-264p]自然大気中のRn222濃度は気象条件によって変化し10(-10)μCi/p3〜10(-13)μCi/p3のオーダー。従って上記の測定結果値は自然大気中に存在するRn222の変動内に入っているので、自然大気と同じである。よって被ばくは無視できる。
=====特定従業員の被ばく線量=====
業務上ラドン生成装置室に立入る従業員の被ばく線量
ラドン生成装置作動中、業務上ラドン浴室に立ち入る場合。一日10分と仮定すれば、 36.2mrem/year
====一般住民の放射線被ばく線量の計算====
環境放射能測定の結果、ラドンセンター建物の屋上、西側境界、東側境界地点でのRn222濃度の平均値は1.37×10(-11)μCi/p3。[日本化学会編 放射性物質 環境汚染物質シリーズ 9-264p]自然大気中のRn222濃度は気象条件によって変化し10(-10)μCi/p3〜10(-13)μCi/p3のオーダー。従って上記の測定結果値は自然大気中に存在するRn222の変動内に入っているので、自然大気と同じである。よって被ばくは無視できる。
====低線量放射線被ばくの人体への影響について====
低線量被ばくとは[NAS-NRC資料編 放射線科学vol.18 no.11 209-216]約100 mrem/yearを意味します。低線量被ばくによる影響として最も重要な問題の一つは遺伝的なあるいは子孫に伝えられる生物学的影響であると考えられている。この低線量被ばくの影響については、あくまで動・植物による実験結果からの推定であるが、遺伝子突然変異、染色体異常、染色体不分離等についても放射線化学vol18
no.11(NAS-NRC資料)に報告されている。また疫学調査について保健物理、黒川良康により報告。また、ICRPでは身体的効果(悪性腫瘍の発生)及び遺伝的効果の推定危険度(障害発生確率の推定)を報告している。ラドンは我が国に於いても古くからラジウム温泉として利用されている。その濃度はかなり高い値ですが、その長い歴史に於いて身体的又は遺伝的障害の発生例は一例も[森永寛著 温泉科学 第25巻2号 p45-54][黒川良康著 保健物理7 放射線影響の疫学調査について p237-241]報告されていない。ICRPによれば[ICRP編 放射線による危険度の評価] 100万の親がそれぞれ一様に1remの被ばくを受けた時、次の10世代までの 子孫の間の遺伝的な異常の増加率は自然に発生する異常の0.1 %程度にすぎません。ラドンセンターのラドン浴に1ヶ月間連統して入浴する人が受ける被ばく線量は約3mrem(3×10(-8)rem)です。一般的に低線量被ばくにおいて、線量−効果関係は直線的であるとして扱いますので、これに基づき、親がラドン浴で被ばくしたことにより次の10世代までの間に発生する異常と自然に発生する異常とを有意差10%で区別できる結果を出すために次の式に示す様に1×10(6)人×(10%/0.1%)×(1rem/3×10(-8)rem)=3×10(10)つまり30億人の親について10世代にわたっての観察が必要となるわけです。実際問題としてこの様なことは不可能。
急性放射線障害は確定的影響なので、閾値以下である低線量被ばくでは生じない。[荒木力著 放射線被ばくの正しい理解 : "放射線"と"放射能"と"放射性物質"はどう違うのか?
p114]最も意見の分かれるのが、低線量被ばくによる晩発性放射線障害(ここでは発がん)が存在するか否か。明確な科学的根拠を示せない理由は以下の通り。
(1)放射線に特有ながんは存在しない
(2)統計学的に有意差を示すのが困難
つまり、低線量被ばくによる発がんの有意性を疫学的に証明するには膨大な母数が必要、実際には不可能。LNT仮説を支持しているICRP(国際放射線防護委員会)は、2007年に次のように報告。
「委員会(ICRP)は、LNTモデルが実用的なその放射線防護体系において引き続き科学的にも最も説得力がある要素である一方、このモデルの根拠となっている仮説を明確に実証する生物学的/疫学的知見がすぐには得られそうもないということを強調しておく。低線量による健康影響が不確実であることから、委員会は、公衆の健康を計画する目的には、非常に長期間にわたり多数の人々が受けたごく小さい線量に関連するかもしれない癌または遺伝的疾患について、仮想的な症例数を計算することは適切でないと判断する。」
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